助詞「で」の識別のしかたを学習します。特に格助詞の「で」にはさまざまな意味があります。他にも接続助詞や終助詞、助動詞、形容動詞の「で」との区別にも気をつけたいところです。「で」がどの意味で使われているのか、見分け方のコツについて説明します。理解した上で問題を解いてみましょう。
格助詞「で」の意味・用法
私たちが日頃何気なく使っている「で」ですが、特に格助詞の「で」には多くの意味があります。格助詞の「で」は体言に接続します。
場所の「で」
「場所を表す語句+で」の形で使います。下の例文で駅も会社も場所を表しています。
・駅で待ち合わせよう。
・会社でお見かけしました。
場面を指すこともあります。
・朝礼で表彰されました。
・試験で良い点を取りました。
時間・期限の「で」
「時を表す語句+で」の形で使われます。
・あと10分で着きます。
・1時間で仕上げました。
原因・理由の「で」
原因・理由を示したいときにも使われます。「~が原因(理由)で」と言い換えられます。
・病気で休みました。
・腹痛で遅れました。
・強風で看板が飛んだ。
手段・方法の「で」
手段・方法を表すときにも使われます。乗り物もよく使われます。「~を使って」と言い換えられます。
・バスで10分ほどです。
・車で来ました。
・解の公式で解いてみます。
材料の「で」
何を使って作られたか、材料を表したいときにも使われます。(手段に含まれることもあります。)
・このいすは木でできています。
・育てたトマトでソースを作りました。
関連記事:中学国文法 助詞の種類と格助詞の覚え方
その他の助詞「で」
接続助詞「で」
接続助詞は主に用言に接続します。接続助詞「で」と「て」は同じ意味で使われ、ガ行、ナ行、バ行、マ行の五段活用動詞に接続するとき「で」が使われます。動作の連続、手段、時間の経過などを表します。
・走って泳いでさらに自転車をこいだ。
・泳いで岸までたどり着きました。
終助詞「で」
終助詞はふつう文末に置かれます。終助詞「で」も「て」と同じ意味で、ガ行、ナ行、バ行、マ行の五段活用動詞に接続するとき「で」が使われます。主張、軽い命令・依頼などを表します。
・本を読んで。
助詞「で」と紛らわしい品詞
「で」は助詞とは限らず、接続詞、助動詞、形容動詞(の一部)という可能性もあります。
接続詞「で」
接続詞の「で」は会話、くだけた場面で使われることがあります。文頭に使われます。
・で、何が言いたいの。
・わざわざ家まで行ったんだ。で、結局会えなかったよ。
断定の助動詞「だ」連用形
断定の助動詞「だ」の連用形は「で」になります。助動詞「だ(で)」は格助詞の「で」と同様、体言に接続します。下の文は「あれが我が家だ」と言い換えられるので、断定の助動詞と判断できます。
・あれが我が家である。
助動詞「そうだ」「ようだ」連用形
形容動詞型の活用をする助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形は、「そうで」「ようで」となります。それぞれ「そうな」を「ような」と言い換えられます。体言とは直接接続しません。
・疑われそうで不安だ。
・まるで夢のようで信じられない。
形容動詞連用形
形容動詞の連用形は「~で」の形になります。形容動詞の場合は「~な」「~だ」と変化させることができ、「とても」を補うことができます。
・波が穏やかで、風が心地よい。
助詞「で」の見分け方
特に問題になるのが格助詞の「で」です。見分け方のポイントをまとめました。
・場所・場面を表す語+で → 場所(場面)の「で」(例)東京で/会議で
・時を表す語+で → 時間・期限の「で」(例)10分で
・「~が原因(理由)で」と言い換えられる → 原因・理由の「で」(例)風邪で休んだ
・「~を使って」と言い換えられる → 手段・方法の「で」(例)車で行った
・「~を材料にして」と言い換えられる → 材料の「で」(例)絹で作られた
用言の後なら接続助詞、文末なら終助詞ですが、試験ではあまり問われないようです。
関連記事:中学国文法 助詞の識別問題「の」
【問題編】助詞「で」の識別
問 次の下線部「で」と同じ意味で使われている助詞の「で」を、あとのア~ウから選び記号で答えなさい。
(1) 学校で具合が悪くなった。
ア 学校に自転車で通った。
イ 鉄でできた釘です。
ウ 空港で偶然会いました。
(2) ケガで試合に出られなかった。
ア 病院で治療した。
イ 風邪で休んだ。
ウ タクシーで病院へ行った。
(3) 3秒で解いてみせよう。
ア 1時間で解き終わった。
イ 公式で解いてみせた。
ウ 家で問題を解いてみた。
(4) 今日は車で行きました。
ア 車の中で眠っていた。
イ 自転車をこいで行きました。
ウ 飛行機で広島へ向かった。
(5) 1時間で帰ってくるよ。
ア 車で帰ってくるよ。
イ 10分で解いてみせた。
ウ もう十分である。
まとめ
「で」の識別問題はいかがでしたか。普段何気なくつかっている助詞の「で」ですが、いろいろな意味や用法で使われています。試験で解くときは「で」に接続する語に注意し、他の言葉に言い換えてみて見分けるようにしましょう。