高校古文の文法で学習する係助詞「は・も・ぞ・なむ・こそ・や・やは・か・かは」の意味・はたらきの意味一覧、「係り結びの法則」に関するまとめと問題です。
係助詞にはどのような意味やはたらきがあり、それぞれどのような語(活用形)が結びの語になるのか、係助詞を使った例文、係り結びと結びの省略、結びの流れについて確認します。
古典文法 係助詞の意味・はたらきと一覧
係助詞のはたらき、各係助詞の結びの語と主な意味・はたらきを一覧で見ていきます。
係助詞のはたらきと結びの語
係助詞は体言他さまざまな語についてある意味を添えるもので、下の活用語に一定の結び方を求めます。係助詞とともに用いられる下の活用語を結びの語といい、文末が連体形・已然形になる係助詞と文末の結び方の関係を係り結びといいます。
係助詞の意味、文末の活用形一覧表
係助詞「は・も・ぞ・なむ・こそ・や・やは・か・かは」の主な意味・はたらき、文末の活用形を示した一覧表です。
係助詞 | 主な意味とはたらきと文末の活用形 |
は | 他との区別・強調「~は」
文末は終止形 |
も | 並列「~も」
同類のもの「~も」 強意「~も」 文末は終止形 |
ぞ
なむ | 強意
文末は連体形 |
こそ | 強意
文末は已然形 |
や
やは か かは | 疑問「~か」
反語「~であろうか、いや~でない」 文末は連体形 |
係助詞 結びによる分類
係助詞の結びの活用形は係助詞によって違い、終止形、連体形、已然形で結ぶものに分けられます。
文末を終止形で結ぶ係助詞 … は、も
文末を連体で結ぶ係助詞 …ぞ、なむ、や、やは、か、かは
文末を已然形で結ぶ係助詞 … こそ
古典文法 係助詞の意味と例文
古文の係助詞の意味と例文を見ていきます。
古文係助詞「は」の意味と例文
古文の係助詞「は」の文末は終止形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●他との区別・強調「~は」
文末に「は」があるときは終助詞として使われていることが多いです。
他との区別・強調
月のころはさらなり。【枕草子】
(月の頃は言うまでもない。)
古文係助詞「も」意味と例文
係助詞「も」の文末は終止形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●並列「~も」
●同類のもの「~も、~もまた」
●強意「~も」
並列
男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。【伊勢物語】
(男も女も恥ずかしがっていたけれど、男はこの女こそ妻にしようと思っている。)
同類のもの
炭もて渡るも、いとつきづきし。【枕草子】
(炭を持って渡るのもまた、たいそう似つかわしい。)
強意
限りなく遠くも来にけるかな、【伊勢物語】
(ずいぶんと遠くへ来たものだなあ)
古文係助詞「ぞ・なむ」意味と例文
古文の係助詞「ぞ・なむ」はの文末は連体形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●強意「~は特に」(訳さないことが多い)
文末に「ぞ」があるときは終助詞として使われていることが多いです。
強意
もと光る竹なむ一筋ありける。【竹取物語】
(根元が光る竹が一本あった。)
声聞くときぞ秋は悲しき【古今和歌集 (猿丸太夫)】
(声を聞くときは特に、秋は悲しく思われる)
古文係助詞「こそ」意味と例文
古文の係助詞「こそ」の文末は已然形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●強意「~は特に」(訳さないことが多い)
強意
男はこの女をこそ得めと思ふ。【伊勢物語】
(男はこの女こそ妻にしようと思っている。)
古文係助詞「や・やは・か・かは」意味と例文
古文の係助詞「や・やは・か・かは」の文末は連体形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●疑問「~か」
●反語「~であろうか、いや~でない」
なお文中に「や」があり、詠嘆の意味で使われているときは間投助詞、文末に「か」があり、詠嘆の意味で使われているときは終助詞です。
疑問
いづれの山か天に近しき【竹取物語】
(どの山が天に近いのか。)
遊びをせむとや生まれけむ【梁塵秘抄】
(遊びをしようとして生まれて来たのだろうか。)
反語
特に「やは」「かは」は反語として使われている例がよく見られます。
春の夜の闇はあやなし梅の花 色こそ見えね香やはかくるる【古今和歌集 (凡河内躬恒)】
(春の夜の闇はわけのわからないことをする 梅の花は色こそ見えないが、香りは隠れるものだろうか、いや隠れない。)
【係助詞の連語】もぞ・もこそ
係助詞の「も」に、係助詞「ぞ」「こそ」が続いた「もぞ・もこそ」はそれぞれ連体形、已然形で結び、次のような意味・はたらきがあります。
●危惧・心配「~したら大変だ」
危惧・心配
雨もぞ降る。【徒然草】
(雨が降ったら大変だ。)
烏などもこそ見つくれ。【枕草子】
(烏などが見つけたら大変だ。)
古典文法 係助詞と係り結び
係り結びとは係助詞と特定の文末表現が結びついて、強調や疑問・反語を表します。
◆強調 → ぞ、なむ+連体形、こそ+已然形
◆疑問・反語 → や、やは、か、かは+連体形
係り結びの省略
係り結びの結びの語が省略されることがあります。
よく省略される語句
言ふ、思ふ、聞く、あり、なり…など
係り結び省略の例文
これなむ都鳥。(伊勢物語)
「都鳥」の後に「なる」(断定の助動詞「なり」の連体形)が省略されています。
この殿の御心、さばかりにこそ。【徒然草】
「こそ」の後に「あらめ」(「め」は推量の助動詞「む」の已然形)が、省略されています。
係り結びの省略(消滅)
結びの語があるのに接続助詞などがついて文が完結せず、係り結びが成立しないとき、結びの省略、または結びの消滅といいます。
係り結びの省略(消滅)の例文
宮よりぞ出でたまひければ、【源氏物語】
(宮中からおでかけになっていたので、)
「ぞ」は連体形が続くはずなのに、順接の確定条件で結びの語が已然形になっています。
それはさこそあらめども、【徒然草】
係助詞「こそ」の結びの語が已然形にはなっていますが、「ども」の前だから已然形になっており、文が完結していません。
【問題編】古典文法係助詞の確認問題
問 次の( )内に入る語をア~ウから選びましょう。
(1) もと光る竹なむ一筋あり( )。
ア けり
イ ける
ウ けれ
イ
(2) 声聞くときぞ秋は( )
ア 悲しき
イ 悲し
ウ 悲しけれ
ア
(3) 男はこの女をこそ( )と思ふ。
ア 得
イ 得む
ウ 得め
ウ
(4) 遊びをせむとや生まれ( )
ア けり
イ けむ
ウ けめ
イ
(5) 香やは( )
ア かくれ
イ かくる
ウ かくるる
ウ
(6) 烏などもこそ( )。
ア 見つくれ
イ 見つくる
ウ 見つけれ
ア
(7) 宮よりぞ出でたまひ( )ば、(訳:宮中からおでかけになっていたので、)
ア けり
イ ける
ウ けれ
ウ