今回は古文の過去の助動詞、「ず」の活用・接続・意味に関するまとめと問題です。
打消しの助動詞「ず」の活用表と接続のしかた、間違えやすい助動詞「ぬ」との見分け方についても確認します。
打ち消しの助動詞「ず」
過去の助動詞「ず」の活用と接続を確認します。
「ず」の活用表
助動詞「ず」の活用表です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
ず | (ず)ざら | ずざり | ず | ぬざる | ねざれ | ざれ |
「ず」の接続
「ず」は活用語の未然形に接続します。活用語の未然形を考えるとき、「ず」がよく使われます。形容詞、形容詞型活用の助動詞はカリ活用未然形の「から・しから」の方が使われます。(本活用の「く・しく」は「ば」が続きます。)
「ず」の活用と接続 例
「ず」は活用語の未然形に接続します。
・知る+ず+む→ 知らざらむ(未然形)
※推量・意志の助動詞「む」は未然形接続
・恋ふ+ず+あり→ 恋ひずあり(連用形)
・知る+ず+けり→ 知らざりけり(連用形)
・悲なし+ず → 悲しからず(終止形)
・知る+ず+人 → 知らぬ人(連体形)
・あり+ず+なり → あらざるなり(連体形)→ あらざなり(発音は「あらざんなり」)
・言ふ+ず+ども → 言はねども(已然形)
・あり+ず+ば [確定条件] → あらねば/あらざれば(已然形)
・言ふ+ず [命令] → 言はざれ(命令形)
已然形「ざれ」は中世までは使われていましたが、江戸時代あたりからあまり使われないようになりました。
「ず」の連体形+なり 撥音便
「ず」の連体形「ざる」の後に助動詞「なり」「めり」が続くときは、撥音便化して「ざん」、表記では「ざなり」「ざめり」となります。
・あらざるなり → あらざなり(発音は「あらざんなり」)
・あらざるめり → あらざめり(発音は「あらざんめり」)
「ず」の意味
助動詞「ず」の意味は「~しない」という打消しです。
・あらず(生きていない)
・知らざりけり(知らなかった)
・言はざるべし(言わないだろう)
・知らぬ人(知らない人)
連体形「ぬ」と完了の「ぬ」の識別
打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」と、完了の助動詞「ぬ」は、打消しの助動詞「ず」(ぬ)は未然形接続、完了の助動詞「ぬ」は連用形接続であることに注目し、区別できます。
・知らぬ(知らない)→ 「知る」未然形+打消しの助動詞
・知りぬ(知った)→ 「知る」連用形+完了の助動詞
「ず」の連体形「ぬ」は体言や断定の助動詞「なり」が続き、完了の「ぬ」は終止形接続の助動詞が続きます。(助動詞に接続するのは補助活用ですが、断定の助動詞「なり」は例外です)
(打ち消しの「ぬ」)知らぬ人、知らぬなり/(完了の「ぬ」)知りぬべし
【問題編】助動詞「ず」の活用・意味
次の問いに答えましょう。
問1 次の助動詞の活用表を完成させましょう。
例語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
ず | |
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問2 [ ]内の現代語の意味になるように、( )内の助動詞を適切な形に活用させましょう。
(1) 思は( ず )む[思わないだろう]
(2) 言は( ず )ども[言わないけれど]
(3) 思は( ず )けり[思わなかった]
(4) あら( ず )めり[いないようだ]
(5) 読ま( ず )べし[読まないだろう]
問3 ア~オの下線部で、打ち消しの助動詞をすべて選びなさい。
ア 知らぬ人
イ 知りぬべし
ウ 知らぬなり
エ 知りぬなり
オ 知らざるなり
まとめ
・打ち消しの助動詞「ず」の活用は「(ず)・ざら、ず・ざり、ず、ぬ・ざる、ね・ざれ、ざれ」で未然形接続
・助動詞が続くときは補助活用(断定の助動詞「なり」は「~ぬ・なり」)
・「ざるなり・ざるめり」は撥音便で「ざなり・ざめり」
・「ぬ」の識別は未然形接続なら打ち消し、連用形接続なら完了の「ぬ」