古典文法 助動詞「たし」「まほし」まとめと問題

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願望の助動詞「たし」「まほし」に関する、まとめと問題です。

「たし」「まほし」の活用表、接続、訳し方、「まほし」と形容詞の「あらまほし」、願望を表す助詞の「ばや」との違いについても確認します。

願望の助動詞「たし」「まほし」

願望の助動詞「たし」「まほし」の活用や意味を確認していきます。「まほし」と「あらまほし」、願望を表す助詞の「ばや」との違いについても見ていきます。

「たし」は現代語でいう「~たい」に近いもので、中世によく使われた助動詞です。「まほし」は平安時代によく使われた助動詞です。(「まほし」→「たし」→「たい」)

「たし」「まほし」の活用表

助動詞「たし」「まほし」の活用表です。未然形は「ず/む/ば」、連用形は「き/けり/て」、連体形は体言、已然形は「ども/ば」に続く形です。

たし(たく)

たから

たく

たかり

たしたき

(たかる)

たけれ
まほし(まほしく)

まほしから

まほしく

まほしかり

まほしまほしき

まほしかる

まほしけれ
 
「たし」は形容詞ク活用、「まほし」は形容詞シク活用型の活用をします。

「たし」「まほし」の接続と意味

助動詞「たし」は連用形に、「まほし」は未然形に接続しはいずれもは「~したい」「~してほしい」という願望の意味を表します。(意味に違いはありません)

たし … 動詞と一部の助動詞の連用形に接続

例:ありたし[あり「連用形」+「たし」](ありたい、あってほしい、いたい、いてほしい)

まほし … 動詞と一部の助動詞の未然形に接続

例:あらまほし[あり「未然形」+「まほし」(ありたい、あってほしい、いたい、いてほしい)

「たし」「まほし」の接続・活用の例

「たし」「まほし」の接続・活用例をそれぞれ確認してみましょう。

・言ふ+たし+ず → 言ひたからず(未然形)

・言ふ+まほし+ず → 言はまほしからず(未然形)

・捨つ+たし+思ふ→ 捨てたく思ふ(連用形)

・捨つ+まほし+思ふ→ 捨てまほしく思ふ(連用形)

※「~まほしう思ふ」のようにウ音便化することもあります。

・言ふ+たし+けり → 言ひたかりけり(連用形)

・言ふ+まほし+けり → 言はまほしかりけり(連用形)

・見+たし [言い切り] → 見たし(終止形)

・見+まほし [言い切り] → 見まほし(終止形)

・言ふ+たし+とき → 言ひたきとき(連体形)

・言ふ+まほし+とき → 言はまほしきとき(連体形)

・言ふ+まほし+べし → 言はまほしかるべし(連体形)

「まほし」と形容詞「あらまほし」の違い

「あり」+助動詞「まほし」の「あらまほし」と、形容詞の「あらまほし」では少し意味に違いがあります。

・「あらまほし(あり+まほし)」… あってほしい、いてほしい、などの「ある、いる」の意味がある

・「あらまほし(形容詞)」… 望ましい、好ましい(「あり(ある、いる))の意味が含まれていない)

助動詞の「まほし」に命令形はありませんが、形容詞の「あらまほし」は命令形(あらまほしかれ)があります。

文脈から助動詞か形容詞かの違いを判断します。どちらの意味で訳せるものもありますが、「~うるはしく、あらまほし」とあれば前に「うるはし」という形容詞があることから、あらまほしも形容詞と考えられます。

助詞「ばや」との違い

終助詞の「ばや」は「たし」「まほし」と同様に願望の意味があります。未然形に接続し、助詞なので活用しません。

「たし」「まほし」との違いは願望が話し手自身の願望に限られるところです。

・行かばや … (自分が)行きたい、行けたらなあ

・行きたし、行かまほし … (自分または他人が)行きたい、(他人に)行ってほしい

【問題編】助動詞「たし」「まほし」の活用・意味

問1 助動詞「たし」「まほし」の活用表を完成させましょう。

例語未然形連用形終止形連体形已然形命令形
たし
まほし

問2 次の(    )内の動詞を適切な形にしましょう。

(1) ( 乗る )たし[乗りたい]

(2) ( 乗る )まほし[乗りたい]

(3) ( 侍り )たし[仕えたい]

(4) ( 侍り )まほし[仕えたい]

問3 次のア~エの下線部で文法的に正しいものはどれですか。

あらまほしかる人なり

ありまほしかる人なり

あらまほしき人なり

ありまほしき人なり

問4 次のア~ウの下線部から助動詞を全て選びましょう。

ア あらばや

イ あらまほしき

ウ あらまほしかれ

エ ありたし

問5 次のア~ウの下線部で「読んでほしい」の意味になるものを全て選びましょう。

ア 読みばや

イ 読ままほし

ウ 読みたし

まとめ

・助動詞「たし」の活用は「(たく)・たから、たく・たかり、たし、たき・(たかる)、たけれ、○」で連用形に接続

・助動詞「まほし」の活用は「(まほしく)・まほしから、まほしく・まほしかり、まほし、まほしき・まほしかる、まほしけれ、○」で未然形に接続

・「たし」「まほし」はいずれも「~したい、~してほしい」という願望を表す

・「あらまほし」には「あり+まほし(ありたい、あってほしい)」は「形容詞(理想的だ、好ましい)」がある

・助詞の「ばや」は自分(話し手)の願望のみだが、「たし」「まほし」は他者に対する願望、他者の願望も表す

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