今回は古文の完了・存続の助動詞、「たり」「り」の活用・接続・意味に関するまとめと問題です。
完了・存続の助動詞「たり」はさまざまな活用語の連用形に接続しますが、「り」は一部の活用のみに接続するという違いがあります。
「たり」「り」の活用表と接続のしかたを確認していきます。
完了の助動詞「たり」「り」
完了の助動詞「たり」「り」の活用と接続、意味を確認していきます。
「たり」「り」の活用表
完了の助動詞「たり」「り」の活用表です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
たり | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ |
り | ら | り | り | る | れ | れ |
「たり」の意味と活用・接続 例
完了・存続の助動詞「たり」は、完了では「~してしまった」、存続では「~している」と訳します。活用語の連用形に接続します。「たり」は「~てあり」が「~たり」に変化したものです。
・来+たり+む→ 来たらむ(未然形)[来ただろう]
・ゐる+たり+けり→ ゐたりけり(連用形)[いたことだなあ]
・行く+たり → 行きたり(終止形)[行ってしまった]
・来(く)+たり+べし → 来(き)たるべし(連体形)[きっと来るだろう]
・寝(ぬ)+たり+ども → 寝(ね)たれども(已然形)[寝ているけれども]
・持つ+たり [命令] → 持ちたれ(命令形)[持っていなさい]
※ 現代語でも使われていますが、中世以降で「行きたり、戻りたり」のように並列の意味で用いられるようになりました。
「たり」の識別
「たり」は完了・存続の助動詞以外にも、タリ活用の形容動詞、断定の助動詞「たり」があります。
「悠々たり」「堂々たり」などの形容動詞は漢語的な表現、断定の助動詞「たり」は「大納言たり」のように体言に接続します。
・完了・存続の「たり」は連用形接続
・断定の「たり」は体言に接続
・形容動詞の「たり」は漢語的な表現に接続、連用形「~と」で連用修飾(例:悠々たり → 悠々と)
「り」の意味と活用・接続 例
完了・存続の助動詞「り」は、完了では「~してしまった」、存続では「~している」と訳します。サ変動詞の未然形、四段活用動詞の已然形(いずれもエ段の音)に接続し、「サ未四已(サミシイ)」で覚えられます。「連用形+あり」が「エ段+り」となり、助動詞「り」が成立しました。(例:咲きあり→咲けり)
・聞く+り+む→ 聞けらむ(未然形)[聞いているだろう]
・咲く+り+けり→ 咲けりけり(連用形)[咲いてしまったなあ]
・行く+り → 行けり(終止形)[行ってしまった]
・す+り+べし → せるべし(連体形)[しているのが当然だ]
・す+り+ども → せれども(已然形)[しているけれども]
・持つ+り [命令] → 持てれ(命令形)[持っていなさい]
【問題編】完了の助動詞「たり」「り」の活用・意味
次の問いに答えましょう。(答えは▶をクリック)
問1 次の完了の助動詞「たり」「り」の活用表を完成させましょう。
例語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
たり | |
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り | |
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問2 [ ]内の現代語の意味になるように、( )内の動詞を適切な形に活用させましょう。
(1)( 言ふ )たり[言っていた]
(2)( 言ふ )り[言っていた]
(3)( す )たり[している]
(4)( す )り[している]
問3 [ ]内の現代語の意味になるように、下線部の助動詞を適切な形に活用させましょう。
(1) 知りたりども[知っているけれども]
(2) 聞けりむ[聞いているだろう]
(3) 知りたりこと[知っていること]
(4) 持てり[持っていなさい]
問4 次のア~ウの下線部で、完了・存続の助動詞はどれですか。
ア 堂々たり
イ 男たり
ウ 返りたり
まとめ
・完了・存続の助動詞「たり」の活用は「たら、たり、たり、たる、たれ、たれ」で連用形接続
・完了の助動詞「り」の活用は「ら、り、り、る、れ、れ」でサ変未然・四段已然(サミシイ)接続
・「たり」はタリ活用形容動詞の語尾、断定の助動詞「たり」もあるので注意