今回は古文の受身・尊敬・可能・自発の助動詞、「る」「らる」に関するまとめと問題です。
「る」「らる」の活用表と接続、活用の例、4つの意味と見分け方について確認します。
「る」「らる」はいずれも同じ意味で活用の型も同じですが、接続する活用語に違いがあります。
受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る・らる」
受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の活用や意味を確認していきましょう。
「る」「らる」の活用表
助動詞「る」「らる」の活用表です。未然形は「ず/む/ば」、連用形は「き/けり/て」、連体形は体言、已然形は「ども/ば」に続く形です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
「る」「らる」の接続の違い
助動詞「る」「らる」はいずれもは動詞の未然形に接続しますが、接続する動詞に違いがあります。
・る … 四段・ナ変・ラ変動詞の未然形に接続
・らる … 上一/二段・下一/二段・カ変・サ変動詞の未然形に接続
「る」は四段、ナ変、ラ変動詞の未然形に接続し、「らる」はそれ以外の動詞の未然形に接続します。未然形がア段になるものは「る」に接続すると覚えておけば良いでしょう。(未然形がア段になっているところを赤字にしました)
乗る(四段)→ 乗らる
着る(上一段)→ 着らる
起く(上二段)→ 起きらる
蹴る(下一段)→ 蹴らる
ほめる(下二段)→ ほめらる
く(カ変)→ こらる
す(サ変)→ せらる
往ぬ(ナ変)→ 往なる
あり(ラ変)→ あらる
「る」「らる」の接続・活用の例
「る」「らる」の接続・活用例をそれぞれ確認してみましょう。
・乗る+る+ず → 乗られず(未然形)
・起く+らる+ず → 起きられず(未然形)
・乗る+る+けり → 乗られけり(連用形)
・起く+らる+けり → 起きられけり(連用形)
・あり+る [言い切り] → あらる(終止形)
・す+らる [言い切り] → せらる(終止形)
・往ぬ+らる+とき → 往なるるとき(連体形)
・捨つ+らる+もの → 捨つらるるもの(連体形)
・あり+る+ば [確定条件] → あられば(已然形)
・捨つ+らる+ば [確定条件] → 捨てられれば(已然形)
・乗る+る → 乗られよ(命令形)
・起く+らる+よ → 起きられよ(命令形)
「る」「らる」の意味と見分け方
助動詞「る」「らる」には受身・尊敬・可能・自発の意味があります。
・受身「~れる、られる」前に「~に」が置かれていることが多い
・尊敬「お~になる」主語に身分の高い人があるとき(「~れ給ふ、~られ給ふ」は例外)
・可能「~できる」(平安時代まで)打消しや反語表現とともに用いる
・自発「自然と~される、~せずにいられない」心情に関わる動詞が使われることが多い
「る」「らる」の前に「~に」が前に使われていると、受身の意味で用いられていることが多いです。ただし「~に」が使われないこともあります。
人にほめらる(人にほめられる)
「る」「らる」が尊敬の意味で使われるのは、身分の高い人の動作のとき、物語の中で筆者が敬意を表している場合、その登場人物の動作のときでも使われます。
・おほせらる(仰せらる)→ 尊敬
・~れたまふ、られたまふ → 受身・可能・自発のどれか
「る」「らる」が打消し、反語表現とともに使われているときは、可能の意味であることが多いです。ただし中世以降は打消しや反語表現を使わなくても、可能の意味でも使われています。
言はれず(言えない、言うことができない)
自発は「思ふ」「覚ゆ」「知る」「見る」「泣く」など、思い、感覚、感情に関わる動詞とともに使われることが多いです。
思はる([自然と]思われる)
覚えらる([自然と]思われる)
【問題編】助動詞「る」「らる」の活用・意味
問1 助動詞「る」「らる」の活用表を完成させましょう。(答えは▼をクリックして見られます)
例語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
問2 次のア、イの動詞と助動詞「る」「らる」の接続が正しい方を記号で選びましょう。(答えは▼をクリックして見られます)
(1) ア 乗らる イ 乗ららる
(2) ア 起きる イ 起きらる
(3) ア 来る イ 来らる
(4) ア あらる イ あららる
(5) ア せる イ せらる
問3 次のア~ウの下線部の助動詞で、尊敬の意味で用いられているのはどれか答えましょう。(答えは▼をクリックして見られます)
ア 人にほめらる
イ 仰せらる
ウ 乗せられたまふ
問4 次のア~ウの下線部の助動詞で、可能の意味で用いられているのはどれか答えましょう。(答えは▼をクリックして見られます)
ア 人にほめらる
イ 仰せらる
ウ 言はれず
まとめ
・助動詞「る」の活用は「る、れ、れ、る、るる、るれ、れよ」
・助動詞「らる」の活用は「らる、られ、られ、らる、らるる、らるれ、られよ」
・「る」「らる」はいずれも活用語の未然形に接続するが、四段・ナ変・ラ変(未然形末尾がア段になるもの)動詞は「る」に、その他は「らる」に接続
・「る」「らる」の意味は受身・尊敬・可能・自発
・「~に」が前にあると「受身」、主語が身分の高い人なら「尊敬」(~れ給ふ、~られ給ふは他の意味)、打消しの語と使われていれば「可能」、知覚・感覚動詞と使われていれば「自発」… 例外もあります