今回は古文の現在推量の助動詞「らむ」、過去推量の助動詞「けむ」の活用・接続・意味に関するまとめと問題です。
助動詞「らむ」「けむ」はいずれもふつうの推量と原因推量、伝聞と婉曲の意味があります。「らむ」は現在の、「けむ」は過去の推量を表します。
活用表からも活用のしかたが似ているのがわかりますが、接続のしかたは異なります。
助動詞「らむ」「けむ」の活用表と接続例、また「らむ」の識別についても確認します。
助動詞 現在推量「らむ」過去推量「けむ」
現在推量の助動詞「らむ」、過去推量の助動詞「けむ」活用と接続、意味などを確認していきます。
「らむ」「けむ」の活用表
現在推量の助動詞「らむ」、過去推量の助動詞「けむ」の活用表です。未然形、連用形、命令形はありません。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
らむ | ○ | ○ | らむ(らん) | らむ(らん) | らめ | ○ |
「らむ」の意味と活用・接続 例
助動詞「らむ」は現在推量、現在の原因推量、現在の伝聞・婉曲の意味があります。
現在推量では「~だろう」、現在推量では「~だからだろう」、現在の伝聞・婉曲では「~ような、~いるとかいう」と訳します。
活用語の連体形(ラ変型には連体形)に接続します。
・あり+らむ [言い切り] → あるらむ/あるらん(終止形)[あるのだろう]
・~や+思ふ+らむ → ~や思ふらむ/~や思ふらん(終止形)[思っているからであろう]
・言ふ+らむ+こと → 言ふらむこと/言ふらんこと(連体形)[言っているようなこと]
・~こそ+おぼす+らむ [係り結び] → ~こそおぼすらめ(已然形)[思っているだろう]
「らむ」の識別
「らむ」は断定の助動詞以外にも、動詞や助動詞と推量の助動詞「む」が接続したものがあります。
完了の助動詞「り」の未然形「ら」、用言の未然形末尾、完了の助動詞「たり」の未然形「たら」、打消しの助動詞「ず」の未然形「ざら」、推量の助動詞「む」が接続します。
助動詞「らむ」は活用語の終止形に接続、その他は未然形に接続しています。
・現在推量の助動詞「らむ」+ 活用語の終止形(ラ変型の連体形)
→ 「泣くらむ」「あるらむ」
・サ変未然形または四段活用已然形+完了の助動詞「り」の未然形「ら」+ 推量の助動詞「む」
→ 「愛せらむ」「泣けらむ」
・用言の未然形(末尾)「ら」+推量の助動詞「む」
→ 「あらむ」「清まらむ」
・完了の助動詞「たり」の未然形「たら」+推量の助動詞「む」
→ 「泣きたらむ」
・打消しの助動詞「ざり」の未然形「ざら」+推量の助動詞「む」
→「あらざらむ」
「けむ」の意味と活用・接続 例
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
けむ | ○ | ○ | けむ(けん) | けむ(けん) | けめ | ○ |
助動詞「けむ」は過去推量、過去の原因推量、過去の伝聞・婉曲の意味があります。
過去推量では「~しただろう」、過去推量では「どうして~したのだろう」、過去の伝聞・婉曲では「~したような、~したとかいう」と訳します。
活用語の連用形に接続します。
・あり+けむ [言い切り] → ありけむ/ありけん(終止形)[あったのだろう]
・~や+思ふ+けむ → ~や思ひけむ/~や思ひけん(終止形)[思っていたからであろう]
・言ふ+けむ+こと → 言ひけむこと/言ひけんこと(連体形)[言っていたようなこと]
・~こそ+おぼす+けむ [係り結び] → ~こそおぼしけめ(已然形)[思っていただろう]
【問題編】助動詞「らむ」「けむ」の活用・意味
次の問いに答えましょう。(答えは▶をクリック)
問1 助動詞「らむ」「けむ」の活用表を完成させましょう。
例語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
らむ | ||||||
けむ |
問2 [ ]内の現代語の意味になるように、( )内の動詞・助動詞を適切な形に活用させましょう。
(1) ( あり )らむ[今はあるのだろう]
(2) ~こそ思ふ( らむ )[思っているのだろう]
(3) 伝え( けむ )こと[伝えていたようなこと]
(4) ( 思ふ )けん[思っていただろう]
(5) 語ら( ざり )む[語らないだろう]
問3 次のア~オの下線部で、現在推量の助動詞はどれですか。
ア 語りたらむ
イ あらざらむ
ウ あはれならむ
エ あるらむ
オ 散らむ
まとめ
・助動詞「らむ」の活用は「○、○、らむ、らむ、らめ、○」で終止形(ラ変連体形)接続
・助動詞「けむ」の活用は「○、○、けむ、けむ、けめ、○」で連用形接続
・「らむ」は現在の推量、原因推量、伝聞・婉曲、「けむ」は過去の推量、原因推量、伝聞・婉曲
・「らむ」には用言や助動詞の活用語尾+推量の助動詞「む」もあり