今回は古文の断定の助動詞、「なり」「たり」の活用・接続・意味に関するまとめと問題です。
断定の助動詞「なり」「たり」の活用表と接続のしかた、「なり」と「たり」の違い、「なり」「たり」の識別についても確認します。
断定の助動詞「なり」「たり」
断定の助動詞「なり」「たり」活用と接続、意味などを確認していきます。
「なり」「たり」の活用表
断定の助動詞「なり」「たり」の活用表です。未然形は「ず/む/ば」、連用形は「き/けり/て」、連体形は体言、已然形は「ども/ば」に続く形です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
なり | なら | なり
に | なり | なる | なれ | なれ |
たり | たら | たり
と | たり | たる | たれ | たれ |
「なり」はナリ活用型、「たり」はタリ活用型の活用です。
「なり」の意味と活用・接続 例
断定の助動詞「なり」は、断定では「~である、~だ」、存在では「~にいる、~にある」と訳します。断定の助動詞「なり」は体言、活用語の連体形、助詞「と・て・ば」などに接続します。存在の意味では方角や場所などの体言に接続します。
・人+なり+む→ 人ならむ(未然形)[人であるだろう]
・さわぐ+なり+けり→ さわぐなりけり(連用形)[さわぐのであった]
・鳥+なり+や+あり+む → 鳥にやあらむ(連用形)[鳥であろうか]
・桃太郎+なり [言い切り] → 桃太郎なり(終止形)[桃太郎である]
・北+なり+宿 → 北なる宿(連体形)[北にある宿]
・花+なり+ども → 花なれども(已然形)[花であるけれども]
・男+なり [命令] → 男なれ(命令形)[男でありなさい]
「なり」の識別
「なり」は断定の助動詞以外にも、伝聞・推定の助動詞「なり」、ナリ活用の形容動詞末尾、動詞「なる」連体形があります。
断定の助動詞と伝聞・推定の助動詞の識別は、接続から判断できます。
・断定の助動詞「なり」は体言・活用語の連体形などに接続
→ 「男なり」「するなり」
・伝聞・推定の助動詞「なり」は活用語の終止形に接続
→ 「すなり」
伝聞・推定の助動詞は「あなり」「ざなり」「ななり」などの形でも使われます。
・形容動詞「~なり」は「和語的な表現+なり」で、一語で意味のある自立語
→ 「あはれなり」「きよげなり」など
・動詞「なる」は「なり」の連体形で、一語で意味のある自立語
→「~に成る」「~と鳴る」
「たり」の意味と活用・接続 例
断定の助動詞「たり」は「~である、~だ」と訳し、体言にのみ接続します。
・猫+たり+む→ 男たらむ(未然形)[猫であろう]
・家+たり+けり→ 家たりけり(連用形)[家であった]
・備前守+たり+あり+き+とき → 備前守とありしとき(連用形)[ 備前守であった]
・人+たり [言い切り] → 人たり(終止形)[人である]
・女+たり+べし → 女たるべし(連体形)[女であるはずだ]
・人+たり+ども → 人たれども(已然形)[人であるけれども]
・男+たり [命令] → 男たれ(命令形)[男であれ]
「たり」の識別
「たり」は断定の助動詞以外にも、完了・存続の助動詞「たり」、タリ活用の形容動詞末尾があります。
・断定の助動詞「たり」は体言に接続
→ 「男たり」「人たり」
・完了・存続の助動詞「たり」は活用語の連用形に接続
→ 「行きたり」「持ちたり」
・形容動詞「~たり」は「漢語的な表現+たり」で、一語で意味のある自立語
→ 「堂々たり」「悠々たり」など
「なり」と「たり」の違い
断定の助動詞「なり」と「たり」はどちらも「~だ、である」と訳しますが、「たり」は体言にのみ接続するのに対し、「なり」は体言だけでなく活用語の連体形にも接続します。
ただし「たり」は漢文や軍記物などで使われます。
【問題編】断定の助動詞「なり」「たり」の活用・意味
問1[ ]内の現代語の意味になるように、下線部の助動詞を適切な形に活用させましょう。
(1) 言ふ( なり )む[言うであろう]
なら
(2) 鳥( なり )やあらむ[鳥であるのだろうか]
に
(3) 東( なり )家[東にある家]
なる
(4) 備前守( たり )ありしとき[している]
と
(5) 男( たり )[男でありなさい]
たれ
問2 次のア~ウの下線部で、断定の助動詞はどれですか。
ア するなり
イ すなり
ウ あはれなり
ア
問3 次のア~ウの下線部で、断定の助動詞はどれですか。
ア 堂々たり
イ 男たり
ウ 返りたり
イ
まとめ
・断定の助動詞「なり」の活用は「なら、なり・に、なり、なる、なれ、なれ」で体言・連体形接続
・断定の助動詞「たり」の活用は「たら、たり・と、たり、たる、たれ、たれ」で体言接続
・「なり」は伝聞・推定の助動詞、ナリ活用形容動詞の語尾、「たり」は完了・存続の助動詞、タリ活用形容動詞の語尾もあるので注意