今回は古文の推量の助動詞、「む(ん)」「むず(んず)」に関するまとめと問題です。「む」と「むず」の活用表や接続のしかた、意味について確認します。
推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」には多くの意味があり、特に「む(ん)」には意志、勧誘、適当、婉曲、仮定と多くの意味で用いられます。
推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」
推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」の活用や意味を確認していきましょう。
「む(ん)」「むず(んず)」の活用表
推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」の活用表です。未然形、連用形、命令形はありません。連体形は体言、已然形は「ども/ば」に続く形です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
む(ん) | ○ | ○ | む(ん) | む(ん) | め | ○ |
むず(んず) | ○ | ○ | むず
(んず) | むずる
(んずる) | むずれ
(んずれ) | ○ |
「む(ん)」の意味と接続・活用の例
推量の助動詞「む(ん)」は、推量、意志、勧誘、適当、婉曲、仮定の意味があり、活用語の未然形に接続します。
「む(ん)」の意味と覚え方
「む(ん)」には多くの意味があります。「すいかかえて」(推量、意志、勧誘、仮定、婉曲、適当の最初の音)と語呂合わせで覚える方法があります。
・推量「~だろう」「きっと~に違いない」… 三人称の動作で用いられる
例:知らん(知っているだろう)、帰りなむ(きっと帰るに違いない)
※ 「知らん」→「知らない」ではないので注意
・意志「~しよう」「~するつもりだ」
例:帰らむ(帰ろう)、参らん(参るつもりだ)
・勧誘「~しませんか」… 二人称の動作で、「~てむ(ん)や」「~なむ(ん)や」と疑問の形で用いられることが多いです。
例:読みたまひてんや(読んでくださいませんか)
・仮定「~であろう」「~だとしたら」… 連体形で用いられる
例:知らんこそあはれなれ(知らないならかわいそうなことよ)
・婉曲「~ような」… 連体形で用いられる
例:雪の降らん日(雪が降るような日)
・適当「~がよい」
例:今日こそ立ため(今日出発するのが良い)
▼「む」と同様多くの意味がある助動詞「べし」についてはコチラ
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「む(ん)」の接続・活用の例
「む(ん)」は活用語の未然形に接続します。
・あり+む [言い切り] → あらむ(終止形)[あるだろう]
・あり+ぬ+む [言い切り] → ありなむ(終止形)[きっとあるに違いない]
・言ふ+ん+こと → 言はんこと(連体形)[言うようなこと]
・咲く+ん+ど → 咲かめど(已然形)[咲くだろうけれど]
「むず」の意味と活用・接続 例
推量の助動詞「むず(んず)」は、推量、意志、婉曲、適当の意味があり、活用語の未然形に接続します。
「むず」の意味
・推量「~だろう」「きっと~に違いない」… 三人称の動作で用いられる
例:来んず(来るだろう)
※ 「来んず」→「来ない」ではないので注意
・意志「~しよう」「~するつもりだ」
例:帰らむず(帰ろう)、参らんず(参るつもりだ)
・婉曲「~ような」… 連体形で用いられる
例:雪の降らんずる日(雪が降るような日)
・適当「~がよい」
例:今日こそ立たむずれ(今日出発するのが良い)
「むず」の接続・活用の例
・あり+むず [言い切り] → あらむず(終止形)[あるだろう]
・言ふ+んず+こと → 言はんずること(連体形)[言うようなこと]
・~こそ+咲く+んず[係り結び] → ~こそ咲かむずれ(已然形)[咲くだろう]
【問題編】推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」の活用・意味
問1 推量の助動詞「む(ん)」「むず(んず)」の活用表を完成させましょう。
例語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
む(ん) | ||||||
むず(んず) |
問2 [ ]内の現代語の意味になるように、( )内の助動詞を適切な形に活用させましょう。
(1) あり( ぬ )( む )[きっとあるに違いない]
(2) 咲か( ん )ど[咲くだろうけれど]
(3) 雪の降ら( んず )日[雪が降るような日]
(4) 今日こそ立た( む )[今日こそ出発しよう]
(5) 今こそ咲か( むず )[今咲くだろう]
問3 次のア~エの下線部をひいた中で、勧誘の意味で使われていると考えられるものを記号で答えなさい。
ア 男ありなむ
イ 知りたまはむ
ウ 語りたまひてむや
エ 雨なむ降らむ
まとめ
・推量の助動詞「む(ん)」の活用は「○、○、む(ん)、む(ん)、め、○」で活用語の未然形に接続
・推量の助動詞「む(ん)」の意味は「すいかかえて」(推量、意志、勧誘、仮定、婉曲、適当)
→ 勧誘は二人称で「~てむや」「~なむや」などの疑問で、仮定と婉曲は連体形
・推量の助動詞「むず(んず)」の活用は「○、○、むず(んず)、むずる(んずる)、むずれ(んずれ)、○」で活用語の未然形に接続
・推量の助動詞「むず(んず)」の意味は推量、意志、婉曲、適当)
→ 婉曲は連体形