古典文法問題頻出の助動詞活用のまとめと問題です。
古文の意味を正しく理解するには、助動詞の意味を正しく訳せることが必要です。しかし助動詞は活用するため、別の助動詞や品詞と間違えてしまいやすいです。接続する語にも気をつけないといけません。
助動詞の活用、接続を徹底攻略し、古文への理解を深めていきましょう。
助動詞活用表【接続別】
助動詞によって意味が違うのはもちろん、接続や活用も異なります。各助動詞の接続や活用を覚えておかないと、正しい意味が理解できないことがあります。
・降りぬ(降った)
・降らぬ(降らない)
上の例だと、降りぬは「降る」の連用形に接続しているため完了の助動詞「ぬ」、降らぬは「降る」の未然形に接続しているので、この「ぬ」は過去の助動詞(「ず」連体形)と判断できます。(「ず」の連体形かどうかは後に体言が続くか、「ぞ・なむ・や・か」などの係助詞が前に置かれていることからも判断できます。)
各助動詞の活用を接続別に確認していきます。
未然形接続の助動詞活用表
未然形接続の助動詞には、使役の助動詞「す・さす・しむ」、受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る・らる」、打消しの助動詞「ず」、推量の助動詞「む」「むず」、「まし」、打消し推量の助動詞「じ」、希望の助動詞「まほし」などがあります。
使役の助動詞「す・さす・しむ」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
す | せ | せ | す | する | すれ | せよ | 下二段型 | 四段・ナ変・ラ変動詞の未然形 |
さす | させ | させ | さす | さする | さすれ | させよ | 下二段型 | 四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形 |
しむ | しめ | しめ | しむ | しむる | しむれ | しめよ | 下二段型 | 未然形 |
使役の助動詞「す・さす・しむ」には使役、尊敬、謙譲の意味があります。「す」「さす」の接続の違いに注意しましょう。
受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る・らる」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ | 下二段型 | 四段・ナ変・ラ変動詞の未然形 |
らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ | 下二段型 | 四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形 |
「る」と「らる」は直前の動詞によって使い分けられます。
打消しの助動詞「ず」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
ず | (ず)
ざら | ず
ざり | ず
| ぬ
ざる | ね
ざれ |
ざれ | 特殊型 | 未然形 |
「ず」の後に助動詞が続くときは下段の補助活用が使われます(連体形の例:あらぬこと、あらざるなり)。ただし断定の「なり」が続くときは「あらぬなり」のように本活用に接続します。
推量の助動詞「む・むず」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
む(ん) | ○ | ○ | む(ん) | む(ん) | め | ○ | 四段型 | 未然形 |
むず(んず) | ○ | ○ | むず
(んず) | むずる
(んずる) | むずれ
(んずれ) | ○ | サ変型 | 未然形 |
「む(ん)」は推量、意志、勧誘、仮定、婉曲、適当(「す・い・か・か・え・て」)「むず(んず)」は、推量、意志、婉曲、適当の意味があります。
関連記事:古典文法 推量の助動詞「む(ん)・むず」まとめと問題
反実仮想の助動詞「まし」の活用表
下二段型四段・ナ変・ラ変動詞の未然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
まし | (ませ)
ましか | ○ | まし | まし | ましか | ○ | 特殊型 | 未然形 |
助動詞「まし」は反実仮想、ためらいの意志、希望、推量の意味があります。反実仮想の意味では「ませば・せば・ましかば・ば」とともに用いられます。
打消し推量の助動詞「じ」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
じ | ○ | ○ | じ | じ | じ | ○ | 特殊型 | 未然形 |
関連記事:古典文法 打消し推量の助動詞「じ・まじ」まとめと問題
希望の助動詞「まほし」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
まほし | (まほしく)
まほしから | まほしく
まほしかり | まほし | まほしき
まほしかる | まほしけれ | ○ | 形容詞シク活用型 | 未然形 |
「まほし」は自分の希望、あるいは他者への希望を表します。
連用形接続の助動詞活用表
連用形接続の助動詞には、過去の助動詞「き・けり」、完了の助動詞「つ・ぬ・たり」、推量の助動詞「けむ」、希望の助動詞「たし」などがあります。
過去の助動詞「き・けり」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
き | せ | ○ | き | し | しか | ○ | 特殊型 | 連用形
カ変・サ変の未然形 |
けり | (けら) | ○ | けり | ける | けれ | ○ | ラ変型 | 連用形 |
「き」は直接過去、「けり」は伝聞過去と詠嘆の意味があります。「き」は「こし・こしか・せし・せしか」とカ変とサ変動詞の未然形にも接続します。
完了の助動詞「つ・ぬ・たり」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
つ | て | て | つ | つる | つれ | てよ | 下二段型 | 連用形 |
ぬ | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | ナ変型 | 連用形 |
たり | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ | ラ変型 | 連用形 |
「つ・ぬ」は完了、強意、並列の意味が、「たり」は「完了・存続」の意味があります。
関連記事:古典文法 完了・存続の助動詞「たり・り」まとめと問題
推量の助動詞「けむ」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
けむ | ○ | ○ | けむ
(けん) | けむ
(けん) | けめ | ○ | 四段型 | 連用形 |
助動詞「けむ」は過去推量、過去の原因推量、過去の伝聞・婉曲の意味があります。
関連記事:古典文法 現在・過去推量の助動詞「らむ・けむ」まとめと問題
希望の助動詞「たし」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
たし | (たく)
たから | たく
たかり | たし | たき
(たかる) | たけれ | ○ | 形容詞ク活用型 | 連用形 |
「たし」は自分や他者に対する希望を表します。
終止形接続の助動詞活用表
終止形に接続する助動詞には、推量、推定の助動詞「べし・らむ・なり・めり・らし」、打消し推量の助動詞「まじ」などがあります。
推量・推定の助動詞「べし・らむ・なり・なり・めり・らし」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
べし | (べく)
べから | べく
べかり | べし
| べき
べかる |
べけれ | ○ | 形容詞ク活用型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
らむ | ○ | ○ | らむ
(らん) | らむ
(らん) | らめ | ○ | 四段型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
なり | ○ | なり | なり | なる | なれ | ○ | ラ変型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
めり | ○ | (めり) | めり | める | めれ | ○ | ラ変型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
らし | ○ | ○ | らし | らし | らし | ○ | 特殊型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
推量の助動詞「べし」は推量、意志、可能、当然、命令、適当(す・い・か・と・め・て)、「なり」は伝聞、推定、「らむ」は現在推量、現在の原因推量、現在の伝聞・婉曲、「めり」は推定、婉曲、「らし」は推定の意味があります。
関連記事:古典文法 推量の助動詞「べし・べらなり」まとめと問題
関連記事:古典文法 現在・過去推量の助動詞「らむ・けむ」まとめと問題
関連記事:古典文法 推定の助動詞「なり・めり・らし」まとめと問題
打消し推量の助動詞「まじ」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
まじ | (まじく)
まじから | まじく
まじかり | まじ | まじき
まじかる |
まじけれ | ○ | 形容詞シク活用型 | 終止形
ラ変型は連体形 |
「まじ」は打消し推量、打消し意志、打消しの当然、不適当・禁止、不可能の予測などの意味があります。
関連記事:古典文法 打消し推量の助動詞「じ・まじ」まとめと問題
連体形・体言接続の助動詞活用表
連体形、体言に接続する助動詞に、断定の「なり・たり」があります。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
なり | なら | なり
に | なり | なる | なれ | なれ | 形容動詞ナリ活用型 | 連体形
体言 |
たり | たら | たり
と | たり | たる | たれ | たれ | 形容動詞ナリ活用型 | 連体形
体言 |
断定の助動詞「なり」は断定と存在、「たり」は断定の意味があります。
特殊な接続の助動詞活用表
特殊な接続の助動詞には完了の「り」、比況の「ごとし」があります。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用型 | 接続 |
り | ら | り | り | る | れ | れ | ラ変型 | サ変動詞未然形
四段動詞已然形 |
ごとし | (ごとく) | ごとく | ごとし | ごとき | ○ | ○ | 形容詞ク活用型 | 体言
活用語の連体形 助詞「が・の」 |
完了の助動詞「り」は完了と存続、「ごとし」は比況と例示の意味があります。
関連記事:古典文法 完了・存続の助動詞「たり・り」まとめと問題
関連記事:古典文法 比況の助動詞「ごとし」まとめと問題
【問題編】助動詞活用表のまとめ
問 次の助動詞活用表の活用・接続を答えましょう。
問 次の助動詞活用表の活用・接続を答えましょう。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
き | 過去 | |||||||
けり | 過去 詠嘆 |
き・・・せ ○ き し しか ○、連用形カ変・サ変の未然形
けり・・・(けら) ○ けり ける けれ ○ 、連用形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
べし | 推量 | |||||||
む(ん) | 推量 | |||||||
むず(んず) | 推量 |
べし・・・(べく)べから べくべかり べし べきべかる べけれ ○ 、 終止形・ラ変型は連体形
む(ん)・・・○ ○ む(ん) む(ん) め ○ 、未然形
むず(んず)・・・○ ○ むず(んず) むずる(んずる) むずれ(んずれ) ○ 、未然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
なり | 伝聞 推定 | |||||||
めり | 婉曲 | |||||||
らし | 推定 |
なり・・・○ なり なり なる なれ ○ 、終止形・ラ変型は連体形
めり・・・○ (めり) めり める めれ ○ 、終止形・ラ変型は連体形
らし・・・○ ○ らし らし らし ○ 、 終止形・ラ変型は連体形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
らむ | 現在推量 | |||||||
けむ | 過去推量 |
らむ ・・・○ ○ らむ(らん) らむ(らん) らめ ○ 、終止形ラ変型は連体形
けむ・・・ ○ ○ けむ(けん) けむ(けん) けめ ○ 、連用形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
す | 使役 | |||||||
さす | 使役 | |||||||
しむ | 使役 |
す・・・せ せ す する すれ せよ、四段・ナ変・ラ変動詞の未然形
さす・・・させ させ さす さする さすれ させよ、四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形
しむ・・・しめ しめ しむ しむる しむれ しめよ、未然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
る | 受身 尊敬 可能 自発 | |||||||
らる | 受身 尊敬 可能 自発 | |||||||
まし | 反実仮想 |
る・・・れ れ る るる るれ れよ 、 四段・ナ変・ラ変動詞の未然形
らる・・・られ られ らる らるる らるれ られよ、四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形
まし・・・ (ませ)ましか ○ まし まし ましか ○ 、 未然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
つ | 完了 | |||||||
ぬ | 完了 | |||||||
たり | 完了 | |||||||
り | 完了 |
つ・・・て て つ つる つれ てよ 、連用形
ぬ・・・な に ぬ ぬる ぬれ ね 、連用形
たり・・・たら たり たり たる たれ たれ、連用形
り・・・ら り り る れ れ 、サ変動詞未然形・四段動詞已然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
ず | 打消し | |||||||
じ | 打消し推量 | |||||||
まじ | 打消し推量 |
ず・・・ (ず)ざら ずざり ず ぬざる ねざれ ざれ、未然形
じ・・・ ○ ○ じ じ じ ○ 、未然形
まじ ・・・(まじく)まじから まじくまじかり まじ まじきまじかる まじけれ ○ 、終止形ラ変型は連体形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
たし | 希望 | |||||||
まほし | 希望 |
たし ・・・(たく)たから たくたかり たし たき(たかる) たけれ ○ 、連用形
まほし・・・ (まほしく)まほしから まほしくまほしかり まほし まほしきまほしかる まほしけれ ○、未然形
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 主な意味 | 接続 |
なり | 断定 | |||||||
たり | 断定 | |||||||
ごとし | 比況 |
なり・・・ なら なりに なり なる なれ なれ、連体形・体言
たり・・・ たら たりと たり たる たれ たれ、 連体形・体言
ごとし・・・ (ごとく) ごとく ごとし ごとき ○ ○ 、体言・活用語の連体形・助詞が・の