今回は意志・推量・勧誘の助動詞「う・よう」と、打ち消しの意志・推量の助動詞「まい」について学習します。
助動詞「う・よう」は「悲しかろう」「元気だろう」「遊ぼう」のように動詞・形容詞・形容動詞・助動詞に、助動詞「まい」は「来ることはあるまい」「言わせまい」のように、動詞や助動詞に続けて使います。
助動詞「う・よう」と「まい」の活用と接続、使い分け方についてマスターしましょう。
助動詞「う・よう」の意味
助動詞「う・よう」には意志と推量、また勧誘の意味もあります。
(1)意志
助動詞「う・よう」を使うことで、あることをしたい、~するつもりだ、という意志を表します。(「意志」というときは、意思〈何かをしたいという思い・考え〉より積極的に何かをしたいという気持ちを示します。)
「う・よう」を意志の意味で使った例文
・尊敬される人になろう。→なりたい、なるつもりだ
・散歩をしよう。→したい、するつもりだ
・明日は早く起きよう。→起きたい、起きるつもりだ
・いらない物は捨てよう。→捨てたい、捨てるつもりだ
(2)推量
助動詞「う・よう」を使うことで、「おそらくこうなるのではないか」とおしはかること(推量)を表します。(推定は証拠やデータなどから判断、推量はより広い意味で個人的な予想、不確かな判断も入ります。)
「う・よう」を推量の意味で使った例文
・おそらく彼は参加するだろう。
・きっときれいだろう。
・それはきっと楽しかろう。→楽しいだろう
・いつかこの仮説が正しいと理解されよう。→理解されるだろう
推量の意味では「~だろう」の形でよく使われます。これは【形容動詞の未然形・活用語尾+う】や【断定の助動詞「だ」未然形+う】になります。
「~だろう」の形になっていない場合、「~だろう」と言い換えて自然であれば推量の意味であると判断できます。
(3)勧誘
「う・よう」は人を誘うとき、一緒に何かをしたいというときに、勧誘の意味でも使われます。
「う・よう」を勧誘の意味で使った例文
・一緒に遊ぼう。
・これからサッカーしよう。
「一緒に~しよう」と言えるときは勧誘の意味になります。
助動詞「う・よう」の活用・接続
意志・推量の助動詞「う・よう」の活用表が下の表です。
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | |
う | ○ | ○ | う | (う) | ○ | ○ |
よう | ○ | ○ | よう | (よう) | ○ | ○ |
「う」「よう」は無変化型の活用です。(使われるのはほとんどが終止形で、連体形は続く体言が限られています。)
外は寒かったろう。(終止形)
思いっきり投げよう。(終止形)
そんなこと言おうものなら、お母さんにしかられてしまう。(連体形)
そんなこと起きようはずはない。(連体形)
「う」は五段活用の動詞、形容詞、形容動詞、助動詞「だ・ます・です・た・ない・たい・ようだ・そうだ」の未然形に接続します。
「よう」は五段活用以外の動詞、助動詞「れる・られる・せる・させる」の未然形に接続します。
助動詞「う・よう」使い分けと接続
助動詞「う」と「よう」は直前の動詞や助動詞によって使い分けられます。
まずは助動詞「う」を使った例文を、接続とともに見てみましょう。
・友達と遊ぼう。(五段動詞「遊ぶ」未然形+う)
・今日の東京は暑かろう。(形容詞「暑い」未然形+う)
・今頃は彼も元気だろう。(形容動詞「元気だ」未然形+う)
・彼がきっと転校生だろう。(助動詞「だ」未然形+う)
・さあ、片付けましょう。(助動詞「ます」未然形+う)
・あの男の人が寒かったでしょう。(助動詞「です」未然形+う)
・外は寒かったろう。(助動詞「た」未然形+う)
・そんなはずはなかろう。(助動詞「ない」未然形+う)
・さぞ、行きたかろう。(助動詞「たい」未然形+う)
・まるで夢のようだろう。(助動詞「ようだ」未然形+う)
・凍えてしまいそうだろう。(助動詞「そうだ」未然形+う)
つぎに助動詞「よう」を使った例文を、接続とともに見てみましょう。
・涼しくなったので、上着を着よう。(上一段動詞「着る」未然形+よう)
・夕飯を食べよう。(下一段動詞「食べる」未然形+よう)
・今日は数学を勉強しよう。(サ変動詞「勉強する」未然形+よう)
・みんなに尊敬されよう。(助動詞「れる」未然形+よう)
・頑張って認められよう。(助動詞「られる」未然形+よう)
・お客さんをこれ以上待たせようものなら、まずいことになる。(助動詞「せる」未然形+よう)
・この案を認めさせよう。(助動詞「させる」未然形+よう)
助動詞「まい」の意味
意志・推量の助動詞「う・よう」に対し、打ち消しの意志・推量の意味を持つ助動詞が「まい」です。
(1)打ち消しの意志
助動詞「まい」には「~しないつもりだ」という打ち消しの意志の意味があります。
「まい」を打ち消しの意志の意味で使った例文
・もう勉強しろとうるさく言うまい。→言わないつもり
・二度と人前で泣くまい。→泣かないつもり
(2)打ち消しの推量
助動詞「まい」には「~しないだろう」という打ち消し推量の意味があります。
「まい」を打ち消し推量の意味で使った例文
・彼はそんなことは言うまい。→言わないだろう
・まだ葉は落ちるまい。→落ちないだろう
助動詞「まい」の活用・接続
打ち消しの意志・推量の助動詞「まい」の活用表が下の表です。
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 | |
まい | ○ | ○ | まい | (まい) | ○ | ○ |
「まい」は無変化型の活用です。(使われるのはほとんどが終止形で、連体形は続く体言が限られています。)
・このことは誰にも言うまい。(終止形)
・雉(きじ)も鳴かずば撃たれまい。【ことわざ】(終止形)
・あろうことか、あるまいことか。(連体形)
・なろうことか、なくまいことか。(連体形)
※連体形の例文には、推量の助動詞「う」が使われています。
助動詞「まい」の接続
「まい」は五段活用の動詞と助動詞「ます」の終止形、その他の動詞と助動詞「れる・られる・せる・させる」の未然形に接続します。(動詞は五段活用は終止形でその他は未然形になることに注意。)
・もう仕事を彼には頼むまい。(五段活用「頼む」終止形+まい)
・何も言いますまい。(助動詞「ます」終止形+まい)
・この空模様では晴れまい。(下一段活用「晴れる」未然形+まい)
・敵側の大きな声援に圧倒されまい。(助動詞「れる」未然形+まい)
・この格好なら声をかけられまい。(助動詞「られる」未然形+まい)
・遅くに外出させまい。(助動詞「せる」未然形+まい)
・体に悪いものを食べさせまい。(助動詞「させる」未然形+まい)
【問題編】助動詞「う・よう・まい」
問1 次の下線部の助動詞「う・よう」と同じ意味で「う・よう」が使われているものを、ア~エから選びなさい。
(1) そろそろ買い物に行こうと思う。
ア さぞ行きたかったろう。
イ 今日のご飯はおいしそう。
ウ さっさと宿題をやろう。
エ 彼が犯人だろう。
(2) 誰が理解してくれよう。
ア また一緒に検定試験に挑戦しよう。
イ こんな時間に誰が来ようか。
ウ うまいものを子どもたちに食べさせよう。
エ その美しさは星のようだ。
問2 次の下線部の助動詞「まい」は、ア 打ち消しの意志、イ 打ち消しの推量のどちらの意味で使われているか。記号で答えなさい。
(1) よもや彼が来ることはあるまい。
(2) 次の試験では絶対落ちまい。
(3) 二度と彼には会わせまい。
助動詞「う・よう」「まい」まとめ
助動詞「う・よう」と「まい」について確認してきました。助動詞「う・よう」には意志・推量・勧誘の意味があり、前の用言や助動詞によって「う」と「よう」を使い分ける必要がありました。
助動詞「まい」には打ち消しの意志と打ち消し推量の意味があり、活用と助動詞によって活用形を変化させる必要がありました。
意味を問われる問題では、意志なら「~するつもり」、推量なら「~だろう」のように、他の語句に言い換えて考えると良いでしょう。