高校の教科書、大学入試などでよく出る古語の中でも、特に重要な形容詞についてまとめました。
重要な古文単語の形容詞とその意味を五十音順に紹介、特に意味を間違えやすい形容詞についても確認します。
重要古文単語 形容詞(五十音順)
五十音順に古語の中でも重要な形容詞を紹介します。(重要度は独自に設定。参考:Weblio古語辞典古語辞典)
重要古語【形容詞】あ行
重要度 | 古語 | 主な意味 |
---|---|---|
★ | あいなし | 不快だ つまらない 不似合いだ |
★★ | あさまし | 驚くばかりだ 興ざめだ ひどい みっともない |
★★ | あたらし | もったいない(惜し) 新しい |
★★ | あぢきなし | 思うようにならない つまらない 苦々しい はかない |
★★ | あやし | (怪し) 不思議だ 変だ もの珍しい はなはだしい (賤し) 身分が低い みっともない |
★ | あやなし | 道理に合わない つまらない |
★★★ | あらまほし | あってほしい 望ましい |
★★★ | ありがたし | めずらしい めったにないほど優れた 生きにくい |
★★★ | いとほし | 気の毒だ かわいい いやだ |
★★★ | いはけなし | 幼い あどけない |
★ | いぶせし | うっとうしい 気がかりだ |
★ | いまいまし | 慎むべきだ 不吉だ 憎らしい |
★ | いまめかし | 現代風だ わざとらしい |
★★ | いみじ | はなはだしい すばらしい ひどい |
★ | うし | つらい 嫌だ 恨めしい |
★★ | うしろめたし | 先が気がかりだ(⇔うしろやすし) うしろめたい |
★ | うしろやすし | 先が安心だ 気安い |
★ | うたてし | がっかりだ 気の毒だ |
★★★ | うつくし | いとしい かわいい 美しい りっぱだ |
★★ | うるはし | 立派だ きちんとしている 堅苦しい |
★ | えうなし | 役に立たない |
★★ | おとなし | 大人っぽい 思慮深い 穏やかだ |
★ | おどろおどろし | おおげさだ 気味が悪い |
★ | おほけなし | 身のほど知らずだ おそれ多い |
★★★ | おぼつかなし | ぼんやりしている 気がかりだ 疑わしい |
★ | おもしろし | 趣がある 興味深い 珍しい |
重要古語【形容詞】か~さ行
重要度 | 古語 | 主な意味 |
---|---|---|
★★ | かぎりなし | 果てしない はなはだしい この上ない |
★★ | かごとがまし | いかにも恨みがましい |
★★ | かしこし | (畏し) 恐れ多い 恐ろしい 身分が高い (賢し) 賢い 立派だ |
★ | かたし | (固し) 固い 厳しい (難し) 難しい めったにない |
★ | かたじけなし | 恐れ多い 面目ない もったいない |
★★ | かたはらいたし | きまりが悪い 腹立たしい 気の毒だ |
★★★ | かなし | (愛し) いとしい すばらしい (悲し) 悲しい かわいそうだ |
★ | からし | つらい 塩辛い いやだ 危うい |
★★ | くちをし | 残念だ 不本意だ 情けない |
★★ | 心憂し | 情けない 不快だ |
★★ | 心苦し | かわいそうだ 心苦しい |
★★ | 心づきなし | 気にくわない |
★ | 心なし | 思いやりがない 風流心がない 無分別だ |
★★★ | 心にくし | 奥ゆかしい 恐ろしい 怪しい |
★★★ | 心もとなし | じれったい 気がかりだ ぼんやりしている |
★ | 心安し | 安心だ 気安い 易しい |
★ | こちたし | わずらわしい はなはだしい 仰々しい |
★ | こちなし | ぶしつけだ 風流心がない |
★ | ことごとし | 仰々しい |
★★★ | さうざうし | 物足りない 心寂しい |
★★ | さうなし | 左右なし・・・ 決着がつかない あれこれ考えるまでもない 双なし・・・ 比べるものがない |
★★ | さかし | 賢い しっかりした 気が利く こざかしい |
★ | さがなし | 意地悪だ 口うるさい やんちゃだ |
★ | しどけなし | くつろいでいる だらしない |
★★ | しるし | はっきりわかる ~のとおりだ |
★★ | すきずきし | 好色だ 物好きだ 風流だ |
★★ | すごし | 気味が悪い もの寂しい 殺風景だ ぞっとするほどすばらしい |
★★★ | すさまじ | 興ざめだ 情趣がない 冷たい ひどい |
重要古語【形容詞】た~ま行
重要度 | 古語 | 主な意味 |
---|---|---|
★★ | たいだいし | 不都合だ |
★★★ | つきづきし | 似つかわしい |
★★ | つらし | 薄情だ つらい |
★★ | つれなし | 平然としている 薄情だ ままならない 何事もない |
★★ | ところせし | 余地がない きゅうくつだ 大げさだ 堂々としている |
★★ | と(疾)し | 早い 速い |
★★★ | なつかし | 心がひかれる 昔が思い出される |
★★ | なまめかし | 若々しい 優美だ 色っぽい |
★★ | なめし | 無礼だ |
★ | なやまし | 難儀だ 気分が悪い |
★ | はかばかし | はきはきしている 頼りになる 本格的だ |
★ | はかなし | 頼りない ちょっとしたこだ 幼い 取るに足りない |
★ | はしたなし | 不似合いだ きまりが悪い 無愛想だ |
★★★ | はづかし | 気づまりだ こちらが気恥しくなるほど立派だ |
★★ | ひがひがし | ひねくれている みっともない ふつうでない |
★★ | びんなし | 具合が悪い 感心できない |
★ | ほいなし | 不本意だ 残念だ |
★ | まさなし | よくない 不都合だ |
★ | まめまめし | まじめだ 実用的だ |
★★ | むつかし | 見苦しい めんどうだ 不快だ |
★★★ | めざまし | 気にくわない 思いのほかすばらしい |
★★ | めづらし | すばらしい 見慣れない 新鮮だ |
★★★ | めでたし | すばらしい 喜ばしい |
★★ | めやすし | 見た目に感じがよい |
★ | ものうし | なんとなくおっくうだ つらい |
★ | ものぐるほし | 狂おしい気持ちだ |
重要古語【形容詞】や~わ行
重要度 | 古語 | 主な意味 |
---|---|---|
★★★ | やさし | つらい 気恥しい 慎み深い 優美だ |
★★★ | やむごとなし | 並大抵でない 特別だ 高貴だ |
★★★ | ゆかし | 見たい 聞きたい 知りたい 心がひかれる |
★★ | ゆくりなし | 思いがけない |
★★ | ゆゆし | おそれ多い 不吉だ はなはだしい |
★★ | よし | 立派だ 美しい すぐれている 高貴だ |
★ | よろし | まずまずだ 好ましい ふさわしい ありふれた |
★ | よしなし | 理由がない 方法がない つまらない |
★★ | らうたし | かわいらしい |
★★ | わびし | つらい 興ざめだ |
★★ | わりなし | むやみやたらだ たまらなくつらい どうしようもない |
★ | わろし | 好ましくない みっともない つたない |
★★★ | をかし | 趣がある 心がひかれる こっけいだ 美しい |
間違えやすい古語の形容詞
間違えやすい古語の形容詞をまとめました。形容詞には現代ではあまり使われなくなった、意外な意味を持つものも多いので注意しましょう。
あやし
「あやし」には「怪し」と「賤し」があり、「不思議だ、珍しい」以外に「身分が低い、みっともない」の意味もあります。
ありがたし
「ありがたし」は現代語の「ありがたい」と近いですが、古文では「めずらしい、生きにくい」などの意味で用いられています。
いとほし
「いとほし」は現代語の「いとおしい」を連想させますが、「気の毒だ、いやだ」という意味もあります。
いまいまし
「いまいまし」は現代語の「忌々しい」の意味でも用いられましたが、「慎むべきだ」の意味もあります。
うしろめたし
「うしろめたし」は「後ろめたい」の意味もありますが、「先が気がかりだ」という意味でも用いられています。
うつくし
古文で「うつくし」は美しいの意味でも使われていますが、「かわいい」の意味でも使われます。
いとうつくしうてゐたり(たいそうかわいらしい様子ですわっていました。)[出典:竹取物語]
「かわいらしい」の意味がある古語に「らうたし」もあります。
うるはし
「うるはし」は「麗しい」から「きれい、美しい」という意味を連想させますが、「立派だ、きちんとしている、堅苦しい」という意味で使われています。
おとなし
「おとなし」は「おとなしい、物静かだ」という意味を連想しやすいですが、「大人っぽい、分別のある」という意味で使われています。
さうざうし
「さうざうし」は「騒々しい」ではなく、「物足りない、心寂しい」の意味で使われています。
なまめかし
「なまめかし」は「色っぽい、なまめかしい」の意味以外に、「若々しい、優美だ」の意味でも使われました。
なつかし
「なつかし」は昔を思い出して心がひかれる「懐かしい」の意味でも用いられましたが、昔のことを思い出さなくても「心がひかれる、好ましい」という意味でも使われていました。
はずかし
「はずかし」は「恥ずかしい」という意味もありますが、こちらが気恥しくなるほどに相手が「すばらしい、立派だ」というときにも使われました。
をかし
源氏物語の「あはれなり」と枕草子の「をかし」はよく比較して説明されています。
「をかし」は現代のように「面白い、こっけいだ」という意味でも使われましたが、「趣がある、風情がある」という意味でよく用いられています。「美しい」の意味でも使われることがありました。
まとめ
特に重要と思われる形容詞を紹介しました。どこかで聞いたことがある…というものも多いと思われます。
「さうざうし」「なまめかし」「うつくし」などの古語のように、意外な意味を持つものもあるので注意しましょう。