今回は用言の一つである「形容動詞」について学習します。形容動詞の性質や一覧、活用、形容動詞と紛らわしい語(形容詞、助動詞など)との区別の仕方についても解説します。
- 「形容動詞ってどんなのがあるの?」
- 「形容動詞と形容詞との区別がつかない」
- 「これって形容動詞なの?」
- 「『こんな』『同じ』も形容動詞?」
という人におすすめの内容となっています。
形容動詞とは
形容動詞には次のような性質があります。
・性質や状態を表す。
・活用する自立語である。
・単独で述語になる(用言)。
・「~だ」で言い切る。
形容動詞は形容詞とよく似ていますが、「~だ」で言い切るのが特徴です。元気だ、穏やかだ、勇敢(ゆうかん)だ、などのような語が形容動詞があります。
なお、「~です」も丁寧な表現の形容動詞ということもあります。(静かです、穏やかです、など)
形容動詞一覧
形容動詞は「~だ」で終わります。下のような形容動詞があります。
色 | 真っ黒だ・真っ白だ・真っ赤だ・鮮やかだ・カラフルだ |
---|---|
形 | 薄っぺらだ・肉厚だ・ギザギザだ |
性格 | 真面目だ・厳格だ・穏やかだ・活発だ・はななげだ・ルーズだ・素直だ・気さくだ |
性質 | 簡潔だ・柔軟だ・現実的だ・義務的だ・貴重だ・にぎやかだ |
程度 | 甚大だ・豊かだ・手狭だ・同じだ |
感情 | 気楽だ・気軽だ・否定的だ・晴れやかだ・さわやかだ |
指示語 | こんなだ・そんなだ・あんなだ・どんなだ |
こんな・同じは形容動詞?
「こんな・そんな・あんな・どんな」「同じ」は体言に続けて使われますが、「こんなだ・そんなだ・あんなだ・どんなだ」や「同じだ」が元の形である形容動詞に分類されます。(活用については後ほど説明)
※これらは連体詞に分類されることもあります。
連体詞…活用しない自立語で体言を修飾する。大きな、わが、この、あの…などが連体詞。
好き・きれいは形容動詞?
英語の like は動詞ですが、日本語の「好き」は形容動詞(「好きだ」の語幹)になります。英語の beautiful は形容詞ですが、日本語の「きれい」は形容動詞(「きれいだ」の語幹)になります。
形容動詞の働き
形容動詞は述語になるだけでなく、体言や用言を修飾します。
述語になる …(例)彼はいつも元気だ。
体言を修飾する …(例)元気な少年だ。→ 少年という体言を修飾している
用言を修飾する …(例)元気に登校した。→ 登校した(登校するという用言)を修飾している
※「元気な」は「元気だ」の連体形、「元気に」は連用形です。
さらに助詞を補うことで主語や接続語にもなります。
主語になる… (例)謙虚なのが彼女の良いところだ。
接続語になる… (例)彼女は謙虚だが、芯が通っている。
形容動詞の語幹用法
「きれい~」「元気!」と会話で形容動詞を語幹で言い切り、「だ」抜きで表すことがあります。これを形容動詞の語幹用法といいます。
形容動詞の活用
形容動詞活用表
基本形 | (語幹) | 未然形 -ない・う |
連用形 ーた・ある・なる |
終止形 | 連体形 ーとき |
仮定形 ーば |
命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
元気だ | 元気 | だろ | だっ で に |
だ | な | なら | ○ |
形容動詞に命令形はありません。
各活用形の例を見てみましょう。
・おそらく彼はいつも穏やかだろう。(未然形)
・教室の中は静かだった。(連用形)
・波は穏やかであった。(連用形)
・きっとにぎやかになるだろう。(連用形)
・今日も元気だ。(終止形)
・鮮やかな色が気に入りました。(連体形)
・もっと静かなら(ば)集中できるんですが。(仮定形)
※「元気です」は形容動詞の語幹に助動詞「です」が接続した形とも考えられますが、一つの形容動詞ともされています。「です」型の形容動詞の活用は以下のとおりです。
形容動詞「~です」活用表
基本形 | (語幹) | 未然形 -う |
連用形 ーた |
終止形 | 連体形 ーので |
仮定形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
元気です | 元気 | でしょ | でし | です | です | ○ | ○ |
こんなだ・そんなだ・あんなだ・どんなだ
「こんなだ・そんなだ・あんなだ・どんなだ」は体言を修飾するとき「こんな・そんな・あんな・どんな」という形になります。
形容詞の連体形は(「~です」を除き)ふつう「な」で終わりますが、これらの連体形は「こんな」と語幹のみになります。(「こんなだ」の語尾を「な」にしてしまうと「こんなな」になってしまいます。)
ただし「ので」「のに」などの助詞に続けるときは「な」がつけられます。
- こんなことってあるんだ。
- 状況がこんななので、とても外には出られない。
同じだ
「同じ」も形容動詞「同じだ」の連体形です。体言に続くときに「な」はふつうつきませんが、助詞に続けるときは「な」がつけられます。
- 彼と僕は同じ服を着ていた。(「同じな服」とは言わない)
- 同じなのにどうしてこうも違うのよ。
形容動詞と紛らわしい語
形容動詞と紛らわしい語と、見分け方についても確認してみましょう。
形容詞との違い・見分け方
形容詞と形容動詞はどちらも同じような働きをします。ただし形容詞は「~い」で、形容動詞は「~だ」が言い切りの形になります。
- 優しい人 → 言い切りの形(終止形)が「優しい」なので形容詞
- 親切な人 → 言い切りの形(終止形)が「親切だ」なので形容動詞
上の例文のように体言に続くとき、形容動詞は「~な」になるのが特徴です。
「好き」「きれい」は形容動詞であることはすでに説明しましたが、「好きな人」「きれいな人」と体言の前では「~な」になります。
助動詞との違い・見分け方
形容動詞は言い切りが「~だ」で終わりますが、助動詞の「だ」「そうだ」「ようだ」も「~だ」となりますので気をつけましょう。
- 波が穏やかだ。形容動詞「穏やかだ」
- 穏やかな海だ。体言+「だ」→ 断定の助動詞「だ」
- 穏やかな海を泳いだ。動詞の連用形+「だ」→ 過去の助動詞「だ」
- 波が穏やかそうだ。「そうだ」の一部
- 波が穏やかなようだ。「ようだ」の一部
よく語尾を「~な+体言」で言い換えられたら形容動詞と説明されることがありますが、注意が必要なのが助動詞の「そうだ」「ようだ」です。
「そうだ」「ようだ」は形容動詞型の活用のため。「~そうな」「~ような」と言うことができます。語尾に「そうだ」「ようだ」とある場合は助動詞と考えます。
体言+「だ」、動詞の連用形+「だ」はどちらも「な+体言」にはできません。
穏やかだ+人 → 穏やかな人(〇)にはできますが、海だ+人 → 海な人、泳ぐ+人 → 泳な人とかは不自然です。
断定の助動詞では一部の助詞に接続するとき「な」になります。
連体詞との違い・見分け方
連体詞も体言を修飾し、「~な」で終わるものがあるので形容動詞と紛らわしいです。「な」を「だ」に言い換えられるかで両者を区別できます。
- 広大な海→ 「広大だ」と言えるので形容動詞
- 大きな海 → 「大きだ」とは言えないので連体詞
- いろいろな顔→ 「いろいろだ」と言えるので形容動詞
- いろんな顔 → 「いろんだ」とは言えないので連体詞
【問題編】形容動詞の活用・識別
問1 次の下線部の形容動詞の活用形を答えましょう。
(1) 彼には豊かな感性がある。
(2) もっと素直になれば良いのに。
(3) 厳格な父であった。
(4) もっと文が簡潔なら良いと思う。
(5) 一見さわやかだが、何を考えているかわからない。
(6) 静かなので緊張する。
(7) 今頃は彼も元気だろう。
(8) 彼の手際は鮮やかだった。
(9) 問題はそれほど複雑でない。
(10) 君ってそんなやつだったのか。
問2 次の下線部の語を、ア 形容動詞、イ 形容詞、ウ 形容動詞+助動詞、エ 名詞+助動詞、オ 連体詞に分けて、記号で答えましょう。
(1) 花火がきれいね。
(2) 声を聞いたが元気そうだった。
(3) そこから見えるのが富士山だ。
(4) あの絵は美しいな。
(5) いろんな人がいるよ。
(6) いろいろな人がいるよ。
(7) 昨日はどんな話をしたっけ。
(8) あの二人はほとんど同じ顔をしている。
(9) にぎやかなように感じました。
(10) そこは人里離れた場所だった。
まとめ
形容動詞の例、働き、活用やまた紛らわしい語との見分け方についてマスターできたでしょうか。
形容動詞は形容詞とよく似た働きをしますが、言い切りの形が「~だ」で終わり、連体形では「~な」と活用するのが特徴です。ただし形容動詞の丁寧な言い方「~です」では連体形がありません。
「きれい」「好き」「同じ」「こんな」は「だ」をつけずに使うことが多いですが、形容動詞に分類されます。
形容動詞と「だ」で終わる助動詞との区別もできるようにしておきましょう。よかったら次の記事も参考にしてみてください。